「Lïhns」- Magma

透明なトンネルのようなところにいる。
青緑色の壁は、光を反射しながら細波立つ。
どうやら水で出来ているらしい。
全体に薄暗いけど、不快な雰囲気はなく
ベッドのように寛げる空間。

さっきまで浮き輪に掴まって、
波打ち際で遊んでいたんだけどな?
ああそうだ、突然の大きな波に攫われて、
浮き輪から手が滑って。
水中で2回転くらいしたのは覚えてるけど、
そこから先の記憶がない。
ここはどこだろう?
子供の頭で考えても、まるで答えが出ない。
そこに突然、大きな声が響く。
「我の住処へ、よくぞきた」
「誰ですか?」
「我は海を守る××××(意味不明)の1人。
お前たち人間は龍神などと呼んでおるようだが」
「龍神さまっていうと、
海岸の崖の上に大きな石碑が建ってるね?」
「この辺りの島では、そうやって祀っておるようだな」
「うちの爺ちゃんが良く拝んでるから知ってる」
「おお、あの翁の孫か。
あの石碑には×××××(意味不明)が施してあるから、
ここからでもちゃんと見聞きして知っておるよ」
「すごい!ところで龍神さま、
僕はいつの間にかここにいたんですが、
帰るにはどうしたら良いですか?」
龍神と聞いて驚いたものの、
案外話しやすそうな雰囲気を感じたので
思い切って聞いてみた。
「うむ。率直に言おう。お前は波に攫われて死んでいる。
ここは、この世の海とあの世の通路になっている。
トンネルの番人も、我の仕事だ」
「じゃあ、僕はもう帰れないんですか?」
「そうだ。少々不憫なことではあるが」
もう帰れないと聞いて、涙が溢れて止まらなくなった。
「そう悲しむな。生物は須く死を迎えるもの。
死ねば身体は原子の塵へ還ってまた別の物質を形づくり、
精神は前世の記憶を僅かに残し新たな身体へと転生する。
これを繰り返し、螺旋を描きつつ高みへと昇るのが、
生物全体のありようなのだ」
難しい話も、画像や感覚で理解できる。
お互いイメージで対話しているらしい。
「龍神さまが言っている事はわかるけど、
僕が帰らないときっと爺ちゃんが悲しみます」
「そうだろうな。世界のありようと個人の感情は別。
××(意味不明)を維持するためにも、
翁の喜ぶ事をしてやりたいが。
それでは、こんな条件ではどうだ。
お前が成人して子を成そうという頃には、
自然への畏敬の念を忘れて我が物顔な仕事をしたり、
人間同士でしか通用しない浅知恵を誇る
傲慢な輩が増えるであろう。
だがお前は、決してそういう人間になってはいけない。
そして、自らの子も傲慢な人間に育ててはならない。
それは翁の望みでもあろう。
それが守れるなら、元の世界へ返してやろう」
「わかりました」
「無理に言葉にせずとも、お前の了解は感じ取れている。
潜在意識下に働きかけて×××××(意味不明)しておいた。
それに背く行動はお前の精神と身体を蝕む事になる。
つまり、自殺と変わらない結果となるぞ」
「そうならないよう気をつけます」
「若いうちは窮屈に思うかもしれないが、
お前自身もそういう生き方を望んでおるようだ。
そして、もう一つ。
我に出会ったお前の記憶を全て消させてもらう。
それでは、地上へ戻すぞ。さらば」



夏の陽射しで背中が暑い。
足だけひんやり冷たい。
波打ち際で、うつ伏せに寝ている。
いつからだろう。
そうだ、浮き輪から手が滑って。
水中で2回転‥?
頭が、痛い。
そういえば浮き輪はどこにいったかな。
起き上がって辺りを見回すと、
同い年くらいの可愛い女の子が、
浮き輪を持って駆け寄って来る。
僕が波に飲まれる一部始終を見ていたらしく、
ちょっと恥ずかしそうに、浮き輪を手渡してくれた。
その子のはにかんだ笑顔に
甘酸っぱい気持ちになりながら、
何か大切な事を忘れているような、
釈然としない気分で帰路についた。

4、5歳頃の夏。
海で独り遊びしていた時の
おぼろげな記憶(妄想?)

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このページは、YUKIが2015年5月26日 18:58に書いたブログ記事です。

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