「Counting Stars」- One Republic

「Counting Stars」


「死ぬのは怖いものなの?」
トモはPのそばを通るを見ていた。
風はPのジャケットを翻し、裏地のチェック柄を少し見せてから
遠くのテールランプのほうへ通り過ぎて行った。
「昨日から今日になるようなもんさ。今日から明日になることにも似てるし。」
ペルメルの灰がPの鼻っつらに乗っかって、トモはほんの少し笑った。

腕時計をなくした。
大切なやつだった。
大切だったのに、なくした。
なくしてから大切になったのかもしれないけど
重さのない手首が恨めしそうにぶらんとぶら下がって
なんか、かわいそ。

「死んだこと、ないくせに」
「馬鹿やろう。何回だってあるってんだよ。」

目の中で光る星が嫌な色をしていた。
こういうのってうんと嫌な気分だ。
指先に残るインクをざらりと擦った。
気持ちの高いところと低いところの間に
汚い紙幣が舞落ちる。
拾うこともできず、燃えて沈むところを眺めて
ちっとも満たされない愛にやるせない気持ちが破裂しそう。

クラクション!クラクション!
Pはのんびりと道路の脇へ避けた。
「いい加減さ、くだらないこと考えてるなよ。」
「だって、」
「カタチばっか求める奴は嫌いだね。」
今更嫌われたってなんとも思わない。
でもPの腕できらりと光る腕時計を見て
ほんの少し目を伏せた。

「リアリストなんだよ。」
「臆病者。」

次々と通り過ぎて行く赤いテールランプ
遠くで星みたいに集まってる。
冷たい秋の風は相変わらずトモの空っぽの手首に絡み付いて
煙草を吸うたびに身体の中まで入り込んできた。

赤い星の中のひとつになるのもいい
空の星の中のひとつになるのもいい
けれど今はこうして道端で腐って突っ立って
死ぬことについて考えてる。
たぶん今が一番。
一番いいんだろうな。

「死んだらヨロシクなぁ。」
「うん。」

今夜はよく眠れると思う。
そして、また今日の続きを迎えるだけ。

END

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このページは、小椋夏子が2014年10月14日 15:26に書いたブログ記事です。

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