「Turtle Bay」- Herbie Mann

〜島の老船長は語る〜

なに?ワシの左足はどうして無くしたか、だと?
いやいや、この辺にはサメやら白い鯨なんておらんよ。
こいつはな、カメにやられたのさ。

お、その顔は疑っとるな‥?
この辺りの海にはな、デカいのがいるんだよ。
それもウミガメとかゾウガメなんてもんじゃない。
甲羅だけで、ほれ、そこに停めてある
軽トラほどはゆうにある大物だ。
人間の子供くらいなら軽く一飲みにしちまう。
姿形は、南米の方にいるっちゅう
「マタマタ」とか言うカメに良く似とったなぁ。
最近はとんと出なくなったが、
ワシが若い頃は数年おきくらいに現れたもんだ。
その度に素潜りの得意な若い衆が刃物一本持って
退治に行くのがこの辺の伝統だったのさ。
‥何?そんな大物を刃物一本で
どうやって仕留めるのかって?
それはな、コツがあるんだよ。
奴は砂浜の割合浅い所に
鼻っつらだけ出して潜ってる。
で、獲物が来ると首を伸ばして食らいつく。
さすがに人間の大人は一度には呑めんから、
まず海に引き込んで溺れさそうとする。
その時に首根っこを掴んで、刃物で掻き切る。
一丁あがり、さ。
怖くないかって?バカ言うな、怖いに決まっとる‥
だが、自分を囮に近づかん事には奴は決して姿を見せん。
大勢行っても砂に隠れたまま出て来んのだよ。
昔は奴とやりあってワシのように足や腕を無くしたり、
しくじって喰われたりなんて事が
この島ではよくあったのさ。
だがな、ワシは足を無くした事を
後悔はしとらんぞ。むしろ誇りに思っとる。
自然の脅威に打ち勝って、生き残った証だからな。
自然ってのは非情だが、ある意味公平でもある。
半端な覚悟では帰って来れん、と言うわけだ。

‥うん、なんだって?そのカメを見てみたい?
見たいと言ったって、奴は平成の世になってからこっち、
全く姿を見せなくなってな。
もうとっくに絶滅してるのかもしれん。
まあ、そうがっかりするな若い衆。
自然の脅威を恐れず暮らせるのも、
現代人の特権ってもんだろう。
‥そのいい暮らしと引き換えに、
何かを失ってるのかも知れんがな。

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このページは、YUKIが2014年8月25日 22:37に書いたブログ記事です。

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