「Sugar Dumpling」- Sam Cooke


ちょっとしたショートムービーのシナリオを書いてみた。
別段面白くもないだろうし何のメッセージ性も無い。
夢も無ければ希望も無い。感動なんてもってのほか。
掃いて捨てるほどのヒマがもし万が一できたら
最後の最後に残る選択肢として
これを読んでみるのもまた一興かもしれない。
ようこそ。
掃いて捨てるほどのヒマができたという事は
掃いて捨てられる側になったという事だ。
あらすじはこうだ。


時は半世紀ほど遡る。場所はアメリカ南部。
売れないシンガーソングライターのサミュエルは
毎晩のように場末の酒場に足を運び
ステージで流行歌を歌っては日銭を稼ぎ
その日の稼ぎのほとんどを酒代に費やす。
そんな日々を過ごしていた。
カウンターの端っこで手にしたグラスを見つめながら
なぜ売れないのか?
まだ若いからだろうか?曲作りが未熟なのか?黒人だから?
他人の歌ばかり歌って生きるのはもうごめんだ。
何の為に歌う?何の為に生きる?
一体何の為に?
そんな事を何度も頭の中に巡らせながら安酒をあおり
空虚な酔いに人生を委ねていた。

ある日
いつもの酒場でひとステージ終え
いつもの安酒をあおっている時
一人の女性がサミュエルに話しかける。
力強くて甘い歌声にすっかり惚れてしまったと興奮気味に言う。
場末の荒んだ酒場には不似合いなほど
甘美な雰囲気をまとったその女性に
サミュエルが虜になるのにそう時間はかからなかった。

そのうち二人は一緒に暮らし始めた。
生活は相変わらず貧しかったが
ほんのささいなことに幸福を感じられるほど
二人の心は満たされていた。

それからしばらくして
いつもの酒場でひとステージ終えた後
ある男がサミュエルに話しかける。
大手レコード会社のスカウトマンと名乗るその男は
夢のような人生を約束しようと言って
レコードデビューの話を持ちかけた。
はやる気持ちを何とか抑えつつ
自分のオリジナル曲でレコードを構成したいとサミュエル。
それで構わないと男。
男と別れた後足速に家に帰りその事を妻に伝えると
妻はまるで自分の事のように喜んだ。

デビュー作は世に放たれるや否や
みるみるヒットチャートを駆け上がって行った。
男の約束通りサミュエルの生活は一変した。
ショービジネス界をはじめほうぼうから引っ張りだこ。
毎晩のように中心街の酒場へ繰り出し
何人もの女を囲っては派手に騒ぎ
ふらふらに酔って夜中遅くに家に帰る。
歌っているか酔っているか寝ているか。
そんな日々が何日も何週間も続き
いつしか酒は麻薬になっていった。

ヘロヘロに酔っぱらって帰ったサミュエルが上機嫌に
新曲のレコードが完成したぞ!シュガー!と叫びながら
確かに「Sugar」と大きく印字された
できたてのレコードを妻に向かって投げつけた日もあった。
そんな日々が続いても妻は文句一つ言う事は無かった。

それからしばらくたったある日
いつものように夜中遅くに帰ったサミュエルは
部屋のドアを勢いよく開け
誕生日おめでとう!と叫びながらピストルの銃口を妻に向けた。
サミュエルの目は焦点が定まっていない。
驚いた妻は引き出しの中からピストルを取り出し
サミュエル?冗談はやめてと声を震わせながら
吸い寄せられるようにゆっくりと引き金に指を掛けた。
愛しているよ。さあ祝砲をあげよう!
そうサミュエルが叫ぶや否や
二つの銃声が一つに重なった。
胸を撃ち抜かれ倒れふしたサミュエル。
その手に握られたピストルの銃口からは万国旗。
我に返った妻は慌てて外へ飛び出して行く。
残された死体の顔にはどこか悲しげな
しかし穏やかな笑みが浮かんでいた。
部屋の片隅ではサミュエルがいつか妻に投げつけた
新譜レコードが回り続けている。


ここでエンドロール。


“彼の死後 その短い生涯を補うかのように
「Sugar」は空前のロングヒットを記録した。
しかしその死には未だに多くの謎が残る。
最大の手掛かりである妻は事件の直後に失踪。
様々な憶測が矢の如く飛び交ったが
そのどれもが推測の域を出られないでいる。”


シュガーをひとつ 甘い夜
連れて行っておくれ どこかへ
いつまでも 目が覚めないように
シュガーをもうひとつ 淡い夢
連れて行っておくれ どこへでも
目が覚めたら それでおしまい
なにもかも そうなにもかも
それでおしまいさ


ツイストで踊りあかそう
サム・クック
SMJ (2013-03-06)
売り上げランキング: 130,446

Trackback(0)


(言及リンクのないトラックバックは無視されます)

Comment

Calendar

アーカイブ

このブログ記事について

このページは、くるっくるが2014年4月12日 02:24に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「「海行かば 山行かば 踊るかばね」- Soul Flower Union」です。

次のブログ記事は「「上海姑娘」- 毛皮のマリーズ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。