ある夜のことだ。
しけたこの町のはずれにあるしけた通りを何をするでもなくぶらぶら歩いてたら
半分以上点いてないしけたネオンサインがかろうじてぶら下がってるだけの
まるっきり廃墟にしか見えないぼろぼろのしけたビルの地下に降りていく階段の入り口に
しけたこの町には似つかわしくないくらい大勢の人たちが群がってて
まるで掃除機をかけた時のごみみたいに吸い込まれてる場面に出くわしたんだ。
そんな光景はしけたこの町じゃめったにお目にかかれないもんだから
ちょっとばかし興味をそそられて群がってるごみのひとかけらに
「ねえ今日なんかあるの?」
って聞いてみたら
「なんだおめえ知らねえのか?・・・ははあ~さてはおめえ嫌われもんだな?」
ってごみのくせに言ってきたもんだからちょっとむっときて
「何でさ?」
って言ったら
「何かおもしれえ事があるって知ったら誰かに教えたくなるもんだろ?」
だってさ。
ごみのくせに。
それで
「おもしろいことって?」
って聞き返したら
「知りたきゃついてきな」
ってだけ言い捨ててそいつは他の大勢のごみたちと一緒に
押し合いへし合いしながらそのしけたビルの地下に吸い込まれていったんだ。
そんなわけでおれもまたごみのひとかけらになって流れに身をまかせてみたってわけさ。
その後のことはもう何て言ったらいいか。
細かいことはよくおぼえてない。
ただもうぶっとばされたっていうかひっくりかえったっていうか。
体じゅうの血液がフルスロットルで暴走しはじめたみたいな。
うまく言えないけどそんな感じだった。
他のみんなもそんな感じだったと思う。
あれがどれくらいの時間だったのかはわからない。
気が付いたらここにいたんだ。
ああ。
まだ耳鳴りがするよ。
ねえあんた友達いる?
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