「Desperado」- The Eagles

「Desperada」

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公衆電話の向こうからは何も聞こえない。
皺だらけの手からすべり落ちた受話器は本来の位置に戻ることなく、まるで首吊り死体のように情けなく宙を泳いだ。

あんず色に染まる埃っぽい街。
通りには何百もの人間が歩いている。
下を向き上を向き皆同じ服を着、あちらへとこちらへと。
力を失ったように路肩に蹲る者もいる。
死んだ虫のようにカラカラと乾いた身体は驚く程軽くなって、
誰かの吐息だけでどこまでも転がっていく。
手を丸め、背を丸め
コロコロ コロコロ カラカラ カラカラ
あてもなく、どうすることもなく
意志もなく、なすがままで
粉々になり、散り散りになり
雨に溶けて、深い穴に落ちる。

年老いたギャリーは電話から離れ最後の煙草に火をつけた。
幸か不幸か、拾ったそれは60年前に初めて吸った銘柄と同じだった。
肺に入り込むキャメルの煙がこの街の乾いた砂と混じり、醜い色のままもの悲しげに目の前から消えていく。

ギャリーの手の中にはもう一枚も切り札は残っていない。
あの日同じようにこうして煙草を吹かしながら選んだダイヤのクイーン。
それが手の届かない身体の深い場所に突き刺さり、今も抜けずに痛みに支配されている。
自由とは何だったのか。
雄弁だった左腕のタトゥーは今や何も語らない。
煙の奥に浮かぶのはキャメルを銜えた故郷の父の姿。


ぽとり、
確かに聞こえた灰の落ちる音。それが合図だった。


こうしてハートのクイーンの声も聞けないまま、ならず者ギャリーのゲームは終わったのである。

end

Desperado
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コメント(2)

今までで一番コレがスキだ。

ありがとうございます!
1時間で書き上げてあまり自信がなかったのでうれしいです。

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このページは、小椋夏子が2013年9月14日 21:32に書いたブログ記事です。

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