夏の夜の暗闇の中を 何かが流れていました
それは願い事でした
いつか願った 誰かが願った 忘れられた願いが
しっとりと やわらかく なまぬるい風に
その身を任せていました
それも 一つだけではありません
いくつもの いくつもの願い事たちが
どこからともなく流れてきては
どこへともなく流れてゆくのでした
音は無く 形も無く
自らの意思さえ無いかのように
それでいて 忘れられた行き先を辿るかのように
ふわりふわりと しっとりと やわらかく
あの願い事たちは
あれからどこへいったのでしょうか
どこかへ辿りついたのでしょうか
それとも 相も変わらず ふわりふわりと
流れつづけているのでしょうか
いつの間にか忘れてしまった
いくつもの わたしの願い事たちは今
どこを流れているのでしょうか
しっとりと やわらかく なまぬるい夜
いくつもの 忘れられた願い事たちを
むかえるように おくりだすように
ふわりと レコードに針をおろしたのでした
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