「七夕の人」- 七尾旅人

夏の夜の暗闇の中を 何かが流れていました

それは願い事でした

いつか願った 誰かが願った 忘れられた願いが
しっとりと やわらかく なまぬるい風に
その身を任せていました
それも 一つだけではありません
いくつもの いくつもの願い事たちが
どこからともなく流れてきては
どこへともなく流れてゆくのでした

音は無く 形も無く
自らの意思さえ無いかのように
それでいて 忘れられた行き先を辿るかのように
ふわりふわりと しっとりと やわらかく

あの願い事たちは
あれからどこへいったのでしょうか
どこかへ辿りついたのでしょうか
それとも 相も変わらず ふわりふわりと
流れつづけているのでしょうか
いつの間にか忘れてしまった
いくつもの わたしの願い事たちは今
どこを流れているのでしょうか

しっとりと やわらかく なまぬるい夜
いくつもの 忘れられた願い事たちを
むかえるように おくりだすように
ふわりと レコードに針をおろしたのでした

リトルメロディ
リトルメロディ
posted with amazlet at 13.07.06
七尾旅人
felicity (2012-08-08)
売り上げランキング: 6,542

Trackback(0)


(言及リンクのないトラックバックは無視されます)

Comment

Calendar

アーカイブ

このブログ記事について

このページは、くるっくるが2013年7月 7日 00:33に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「「Rainy Day, Dream Away」- JIMI HENDRIX」です。

次のブログ記事は「「You Are Welcome」- The Beach Boys」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。