「People are Strange」- The Doors

おかしなきみへ

DSC_8867pp.jpg


やぁ、元気かい。
すっかり暖かくなって、この間はテントの外に寝袋を敷いて寝たんだ。
顔の横には生まれたばかりの土筆が2本。
土の中から春の香りがして、それが頭の中をとろんとさせて
何の夢を見ていてたのか思い出せないほど
深い深い眠りだったよ。


...まぁ、いま思えばあれは春の香りのせいでなく
近くに生えていたキノコの胞子のせいだったのだけど。


目が覚めたのか、まだ夢の中なのかわからない錯覚に陥ったんだ。
上も下も右も左も分からない。
いま自分がどこにいるのか、何をしているのか。
腕が自分の腕じゃないみたいで、動かしても動かせているのかさえ分からない。


見たことも無い色とりどりの木々が
何百メートルもある枝を絡ませ合いながらぐねぐねと踊り
空には星や太陽や虹が出たり消えたりしていた。
目隠ししてチョッパーに股がって、最高速度で山を駆け上がったり駆け下りたりしている気分さ。
ドアーズの曲が頭の中をメドレーになって流れ続けてた。


何百キロも何千キロも走っていた気分だった。
もう湖も見えないほど遠くにあって、別の大陸まで来てしまったような。
でもだんだんと戻る意識の中で見えてきたのは2本の土筆。
不思議そうな顔でこっちを見ていた。


今となれば笑い話だけど、あのとき死んでいてもおかしくなかったね。
春の陽気の中で土筆に看取られながら死ぬなんて
そんなのはおとぎ話のお姫様みたいでまっぴらごめんだよ。


じゃあ、また手紙を書くね。
手紙を書いていれば元気なんだから。
もうキノコには近づかないさ。


顔から出てくる雨より。

Strange Days
Strange Days
posted with amazlet at 13.03.15
Doors
Rhino / Wea (2007-03-27)
売り上げランキング: 9,676

Trackback(0)


(言及リンクのないトラックバックは無視されます)

Comment

Calendar

アーカイブ

このブログ記事について

このページは、小椋夏子が2013年3月16日 01:53に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「「The Touch」 - The John Hall Band」です。

次のブログ記事は「「Nothing But Time 」- Royal Fingerbowl」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。