それはさて置き 春である
春は四季の中で最もその到来を切望される季節である
冬の凍える寒さや草木の枯れた荒涼とした風景が
生命感あふれる春の訪れを5割増しで喜ばしいものに
つまり過大評価しているのだ アメとムチ効果である
そして 桜という春の象徴的存在
黄色い声援を一身に浴びた春のメインボーカルがこれに拍車を掛ける
もはや春を嫌う者など皆無と言っても何ら差し支えは無いのだ
しかし 春はアホである
人間に例えると 理性的ではなく本能的で
無条件に楽観的で 底抜けに明るい
憂いや悩みなどとはまるで無縁かのようなタイプだ
要するに何も考えていない エネルギーこそ有り余っているものの
ただただテンション高いだけの つまりアホなのである
春はアホである
春とはアホな季節なのである
空気を読むという事を知らない 情緒というものを知らない
春は徐々にやっては来ない しずしずとやっては来ない
急に ドタバタ音を立てながら 駆け足で 陽気に
これっぽっちの陰も無い 満面のアホ面でやって来る
春はアホである
春に生まれたやつもアホである
春に売り出される新商品もアホである
春と名の付くものは 春にまつわるものは全てアホである
もうとにかくアホなのである
しかし
世の中とは皮肉なものというか うまくできているというか
冬の荒涼とした風景に惹かれてしまうおれなんかは
こういうアホに ほとほと救われるのである
以上の事から 話をまとめると こういう事になる
春はアホではない
アホはおれである
それはさて置き もし 春の足音というものがあるとしたら
この曲のような音 この曲のようなリズムに違いない
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