昨日までの寒さが嘘みたいな、暖かく晴れた春の日。
すれ違う車がほとんどいない田舎道を車で走る。
世界が、自分だけを残して行ってしまったような心持ち。
この時期になると毎年こうなる。
カーステレオからは別れの曲が。
何かが蒸発して空洞になったような心に、過去が蘇ってくる。
大学の卒業式の日。
「じゃあ、バイバイ」
と言うと、女友達二人組は少し名残惜しそうな素振り。
もう二度と会えなくなるってわけじゃないのに、と思い
「また会えるから」
そう言って別れた。
それ以来、その二人とは一度も会っていない。
オーストラリアのド真ん中。
ひたすらに広大な赤茶色の砂漠。
その中を走る一本の道沿いに、ポツリと姿を現す宿泊施設。
ボロい中古車での旅の途中、数ヶ月間そこに住み込みで働いた。
最終日、つまり再び旅を再開する前日。
同じくそこで働いていた日本通のオーストラリア人が最後にメッセージをくれた。
ノートには「一期一会」と日本語で書かれていた。
そして「この言葉を忘れないでください」と。
その時はなぜだかあまりピンとこなかった。
彼とも、それ以来会っていない。
小学生の頃、隣の県に転校していった友達。
二十歳を迎える前に死んだ友達。
喧嘩して別れた恋人。
そして、いつの間にか疎遠になっていった人たち。
思い出はきっと悲しみと同じ成分なんだな
思い出はきっと悲しみと同じ成分なんだな
カーステレオに合わせて、つぶやくように歌う。
人の心って、変わっていくものなんだろうか、変わらないものなんだろうか。
人の心って、変わっていくものなんだろうな、変わらないものなんだろうな。
「一期一会」、というあの言葉が、今になって沁みてくる。
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