「Here Comes The Sun」
太陽が昇らなくなって9日。漆黒の午後2時30分にアパートのベルが鳴った。
誰かというのは検討がついたが、もやのかかったドアスコープで覗くとそこにはいかにも胡散臭そうな奴が立っていた。長く伸ばした手入れのされていない黒髪と、ところどころ穴の空いたカラシ色したバッドマンのTシャツ。わりと長い足にぴったりしたジーンズがきまっている。男だか女だかわからないようなそいつは、ギョロリとした目をこちらに向け、ヤニで汚れた歯を惜しげもなくむいて笑いかけた。
「よゥ」
ぼくはドアを開けて、奴を部屋の中へ招き入れた。
「ずいぶんと久しぶりだねエリック。」
エリックはコーラの大瓶をテーブルの上に音を立てて置くと、木の枝みたいな指でぼくの灰皿を引っ掻き回して手ごろなものに火をつけ、赤いソファでプカプカ吸いはじめた。
「あいかわらず馬鹿みてぇなツラしてやがる。」
「この顔は神様の最高ケッサクだよ。」
「ピカソは神じゃねぇぞ。」
エリックは食べかけのサンドイッチがのった皿に、ジーンズの腰にさして隠していた銃を乗せた。
「太陽を、とりもどす。」
ハムとトマトの間で転がるコルクに、部屋の電球が映りこんでいる。ぼくはタバコに火をつけた。
「エリック」
「簡単だ。」
2億3千年前にもやった、と目の前のキチガイは笑う。そしてぼくが伸ばすよりも先に銃を手に取ると、さっきと同じようにジーンズの中へ差し込んだ。パンの耳やトマトが、ボタボタと床に落ちた。
その晩、ぼくとエリックは部屋の小さなブラウン管テレビで「カッコーの巣の上で」という75年の映画を観た。
永遠のような133分。ぼくは知らぬ間に寝入ってしまっていた。
インディアンの夢からさめると、妙になつかしい香りが鼻をついた。エリックのいたソファのほうを見たけど、エリックはいない。壁に貼っていた、ポール・マッカートニーのポスターもなくなっていた。
窓の向こうで、朝焼けの空が赤紫色に染まっている。
ぼくは、太陽の匂いを嗅いだ。
END
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あれ。。?
何かこの話、デジャヴなんやけど。。
なんでやろ。。。?
前にブログに書いたやつをもってきたんだ~
な〜る!
何かこの話好きなんやわな〜
ありがとー!
私もお気に入りだよ~