「Star Carpet Ride」- RAVEN

あるところに


RAVEN


という刺繍の入ったジャケットを着たやつらがいた


そいつらはみんな単車乗りで
夜になると街中だとか 田舎道だとか 海沿いだとかを
毎日のように走っていた


ある時 ある一人のやつが
真上の空を見上げながら走っていた


うなるエンジン音が鳴り響く中
仲間の一人がそいつに向かって大声を上げた


おい 何してんだ あぶねえだろ 前見ろ 前 おい


でもそいつは 聞こえてないのか聞こえてないふりをしているのか
相も変わらず真上を見上げたまま走り続けていた


不思議に思った仲間の一人がちらっと空を見上げてみた


星だった
空の端から端まで 大小の光の粒でびっしり
天の川までくっきり見えた
文字通り 吸い込まれるような空模様だった


どのくらいそうしていたのか
視線を下に戻すと
何が何だか分からなかった


道が無くなっていた
道どころか地面が 周りにあった全部が無くなっていた
いつの間にか 何故か うなるエンジン音も消えていた
目に見えるのは 仲間とその単車達
そして上下左右360度に広がる さっきまでの星空


おい 何これ どうなってんの?


という声が聞こえた 仲間のうちの一人の声


こっちが聞きてえよ 何だこりゃ すげえなおい はは


今度は別の仲間の声
耳から聞こえるんじゃなく 頭の中で鳴っているような
どこか 自分の体の中から仲間の声が響いてくるような感じ


ここは 宇宙?


上も下も分からなかった 走っているのかも分からなかった
ただ 周りの景色が ゆっくり ゆっくり 後ろに流れて行った


仲間達がおれの中でしゃべっている


おい 何なんだまじで どこだよここは


だからおれに聞くんじゃねえよ 見たまんまだとしか言えねえだろが


しかし なんちゅう景色や めちゃくちゃきれいやな


とにかく どうにかして帰らねえと


どうにかっつったって どうすんだ


ほんまやで ここがどこかも分からんのに どこ行ったらええねん


あっ 流れ星


そうか これは夢だ 幻だ そうに決まってる


そうかそうか な~んだ あ~焦った


そうと分かりゃ さて どうする?


おい あそこの一番でかい光んとこまで行ってみようぜ


あほ 黒焦げんなって燃え尽きてまうで


だからこれは夢だっつったじゃん 大丈夫だって


あ そかそか そうやったな


どこにでも好きなところに行けるってえわけさ


よし みんな 探検しようぜ 宇宙探検


まったく わけが分からんな はっはっ


単車乗り達は いつものように なめらかに アクセルを目一杯回した
いくつものヘッドライトの光が 果てしない闇に吸い込まれていった
数え切れない 強い光が 弱い光が 生き物のように瞬いていた
それら全てが ゆっくり ゆっくり 流れて行った

限り無く赤に近い黒
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このページは、くるっくるが2012年8月24日 02:03に書いたブログ記事です。

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